01依頼の背景
投資ファンドが企業の買収を検討する際には対象企業の事業と市場を短い期間で調べ上げるビジネスデューデリジェンス(BDD)を行います。今回BDDを担うチームに業務委託として加わりました。求められた役割は市場の大きさと伸びを数字で示すこと、対象企業がどこで稼いでいるかを売上データから示すこと、そして投資委員会にそのまま出せる報告資料に仕上げることです。守秘義務のため業種、地域、対象企業は掲載していません。
02担当した範囲
報告資料の大半の章を分析から資料の作成まで担当しました。
| 章 | 主な内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 市場 | 市場規模の推計と推移、地域別の市場、事業別の市場 | 分析・資料作成 |
| 自社分析 | 事業別・取引先別・仕入先別・保有資産別の売上と構成 | 分析・資料作成 |
| 採用 | 地域・職種ごとの求人条件と、近隣の同業者との比較 | 調査・資料作成 |
| 競合 | 規模と成長性の比較 | 調査・資料作成 |
| 全体 | 版の管理、図表とデータブックの整合 | 資料作成 |
03課題
- 市場規模を直接示す統計がない:対象の市場そのものを集計した統計がなく、複数の公的統計を組み合わせて推計する必要がありました。
- 地域ごと、年度ごとの数字が要る:全国の数字だけでは判断できず、対象企業が営業する地域の市場を年度ごとに示すことが求められました。
- 図表の数が多い:分析の範囲が広く、グラフは最終的に153点になりました。1点ずつ手で作っていては期間内に終わりません。
- 数字の出所を必ず問われる:投資判断に使う資料のため、どのグラフも「元のデータは何で、どう計算したか」を説明できる必要がありました。
- レビューのたびに数字と構成が動く:指摘が入るたびに修正が入り、直した箇所とは別のページが崩れない仕組みが必要でした。
04やったこと
- 市場規模の推計:発注の規模を表す公的統計を母体にし、別の統計と調査から求めた構成比を掛けて対象市場の規模を推計しました。母体が市場の一部しか表さない代理の指標であることは出所欄に明記しています。
- 地域への按分:全国に対する地域の比率を年度ごとに計算し直し、地域別の市場を算出しました。統計が未公表の年は前年比で延長し、実績と推計を凡例と見出しで分けています。
- 事業分析:売上データを事業別、取引先別、仕入・外注先別、保有資産別に集計し直しました。推移や構成、上位への集中(パレート)、季節性をグラフにまとめています。
- 採用と競合の調査:地域・職種ごとの求人条件と近隣の同業者の条件を比べました。競合については規模と成長性で比較しています。
- グラフとデータブックの作成:グラフはすべてExcelを埋め込んだ形で作り、PowerPoint上で元の数値を開けるようにしました。あわせて図表と1対1で対応するデータブック(Excel、中間納品時点で141シート)を作成しています。
- 報告資料の組み立て:Python(python-pptx)で型のスライドを複製し、数値とグラフを差し替えて組み立てました。各ページの示唆は質問への回答や経営陣との面談内容を受けて書き直しています。
- 版ごとの検証:版を上げるたびに検証スクリプトで数値の一致、グラフの描画、前の版との差分を確かめました。最終的に63版を重ねています。
05技術構成
| 役割 | 使った技術 | 選んだ理由 |
|---|---|---|
| 統計の収集と集計 | Python(pandas)、公的統計のデータ | 年度と地域の組み合わせが多く、手作業の集計では誤りが避けられないため |
| 推計の計算 | Excel(数式) | 計算の過程を、レビューする人がそのまま追えるようにするため |
| グラフ | PowerPointへのExcel埋め込み(python-pptx) | 図から元の数値を開けて、数字が変わってもグラフを作り直せるようにするため |
| スライドの組み立て | python-pptx(型の複製と差し替え) | 書式のずれを防ぎ、手作業の調整を減らすため |
| 文章と作業の分担 | Claude、Codex、Gemini | 示唆、集計と実装、日本語の推敲を分け、互いの誤りを照合するため |
| 検証 | 検証スクリプト、AppleScript(PowerPoint実機での書き出し) | 数値、描画、版の差分を機械で確かめ、実機の表示と照合するため |
06成果
- 78枚の報告資料、グラフ153点:埋め込みのExcel133点を含め、すべてのグラフから元の数値と計算をたどれます。
- 141シートのデータブック:中間納品の時点で図表と1対1で対応し、出所、計算式、仮定を確認できる形に整えました。
- 63版:約1か月のあいだ上書きをせずに版を重ね、指摘とその対応を追える形で残しています。
- 50時間(目安)の削減:1案件あたり集計と資料作成にかかる時間を短く抑えました。
- 2週間(目安)で初版:主要な図表と報告資料の初版をこの期間でそろえています。
07AIで短くした工程
- グラフを「作る」作業をなくす:元データからグラフまでを1本のスクリプトでつなぎました。数字が変わっても該当するグラフをまとめて作り直せます。人の時間はグラフの調整から示唆の検討に移りました。
- レビューの指摘を検査コードに変える:受けた指摘は分野ごとのルールに書き足すだけでなく、検証スクリプトの検査項目に加えました。同じ指摘が次の版で再び出ることを仕組みで防いでいます。
- ライブラリでは見えない崩れを実機で拾う:python-pptxで生成した資料はファイル上は正しくても、PowerPointで開くと文字があふれることがあります。AppleScriptでPowerPoint実機からPDFと画像に書き出し、表示の崩れを確かめました。
- 3つのAIで互いを確かめる:集計と実装はCodex、示唆の下書きと照合はClaude、日本語のリズムはGeminiと役割を分けました。1つのAIに任せると見落とす誤りを別のAIの目で拾っています。
更新日 2026/10/04
CONTACT
似た課題はありませんか。
いまの業務を伺い、自動化できる範囲をその場でお伝えします。
ほかの実績
すべて見る →AI導入
MCPで社内のデータと外部サービスをつなぎ、AIから操作できるように
IT・サービス業の企業向けに、社内のデータと外部サービスのAPIを生成AIから扱えるMCPサーバーを構築しました。検索・参照・登録をツールとして定義し、書き込みは下書きと確定の2段階に分けて監査ログを残します。情報を探して貼り付ける作業を月40時間(目安)減らしました。
- 月40時間
- 削減時間の目安
- 1週間
- 納品期間の目安
BDD支援
BDDの市場推計を「数量×単価」で組み立て、外部環境と自社分析を担当
企業の買収検討で行うビジネスデューデリジェンス(BDD)に、業務委託としてチームに加わりました。53枚の報告資料のうち、外部環境(市場)、自社概要、自社分析の章を担当しています。市場の章は17枚にわたり、公表されていない市場規模を、数量と単価に分けて推計しました。
- 50時間
- 削減時間の目安(1案件あたり)
- 2週間
- 納品期間の目安
業務自動化
複数の太陽光発電所の監視を自動化し、毎日2時間の確認作業をほぼゼロに
太陽光発電事業者向けに、複数の発電所の管理サイトの確認を、ログインから異常時の通知まで自動化しました。毎日約2時間の確認とExcelへの転記がほぼゼロになり、月40時間(目安)の作業を削減しました。取得の失敗と発電の異常は分けて知らせるため、仕組みの停止にも気づけます。
- 月40時間
- 削減時間の目安
- 2週間
- 納品期間の目安